「カイジさーん」
佐原はレジの周りにくるりと渡されているモールを外しながらカイジに話しかけた。
「あー」
めんどくさそうに返事をするカイジもまた、商品の棚の周りのモールを外している。
二人の居る店内に流れるBGMはもう、昨日までさんざん聞いていたクリスマスソングではない。
「店長がね、期限過ぎたケーキとかは食ってもいいって昨日言ってました。」
「いらねえよ、ンなもん…佐原食え。」
「えー、でも結構量あるんスよ。」
「別に食いきれなきゃ捨てりゃあ良いだろ。」
「またまたー。カイジさん実は甘党なくせに。」
「う、うるせえなっ…!気分じゃねぇんだよ!」
「まぁまぁ。俺カイジさんとケーキ食べたいんスよ。ね、いいでしょカイジさん。」
カイジがレジの方に視線を向けると、笑顔を浮かべる佐原と目が合った。
悪意のない笑みに思わずたじろいでしまう。
…佐原の笑顔は苦手だ。
「…どんぐらいあんだよ。」
目を外して呟く。その言葉に佐原は眼を細めてクックッと笑った。
「やっぱ甘党っすよね?なんだかんだ言って。」
「うるせえっつってんだろ…!量聞いてんだよっ…!」
「えーっと、ピースで50個ですね」
「ご、ごじゅ……」
「25ずつで、仕方ないから甘党なカイジさんに俺から20ピースプレゼントしちゃいます。」
「お、おま…佐原っ……!!」
「じゃーお茶沸かして来ますねー。」
佐原はそのままさっさとバックヤードへ消え、カイジは自分の手に握られたモールの束を一瞥した。
「休憩するか…。」
溜息をついた後、佐原の居るバックヤードへ向かって足を進めた。
すぐにお目にかかるであろう大量のケーキに胸やけを覚えながら。
いや、君ら業務しようよ。
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