「カイジさん」
「また何処から入ってきやがった…不法侵入って知ってるか?」
「そんなことより。お年玉」
………はて。
何を言ってるんだこのガキは。
「何だって…?よく聞こえなかったんだが…」
「だから。お年玉」
…聞き間違いではないようだが、全く会話の要領を得ていないと思うのは俺だけだろうか。
「…お年玉がどうした。」
「ちょうだい。」
……。
「誰が」
「カイジさんが」
「誰に」
「俺に」
………。
「何の為に」
「世間では元旦には子供は大人に小遣いを貰うと聞いた」
「…へえ。それは知らなかった」
「欲しい」
「知らねえよ!何で見ず知らずのガキに渡さなきゃなんねえんだよ…!!」
「…名前は赤木しげる。」
「知ってるよ…!」
「今カイジさんの目に映っているのは俺。」
「わかったよ!確かに見ず知らずじゃねえな!俺が悪かったよ…!」
「欲しい。」
「だぁっ!家族だろ!家族に貰うだろ、普通は!」
「…カイジさん」
「な…何だよ。」
途端に目を伏せたアカギに、少しうろたえる。
「俺に家族は居ない。」
「え……」
「だからお年玉が貰えない」
「……そうだったのか。」
少しだけ、後悔。
あと、アカギもやはり人の子だったのかという驚きが少し。
「まあ…袋もねぇし、少しだけど…」
そう言って財布を取りに立ちあがろうとする。
「金は要らない。」
「はっ……!?」
確かにアカギなら有り余ってるだろうが。
「じゃあ何が要るんだ…!」
「……鍵。」
かぎ。カギ……鍵…?
「鍵って…」
「ここの鍵が欲しい。」
「いつも勝手に開けて音もなく入ってくんじゃねえか!」
「…でも欲しい。」
「意味分かんねえ…」
「くれないなら居座るけど」
「何っ!?」
「カイジさんの手料理が楽しみだ」
「いやいやいやどこ突っ込んでいいのかすら分かんねえよ…」
「カイジさん」
手のひらを上にして手を差し出したアカギにイライラしつつも、部屋の合鍵を探しに行く俺は馬鹿だ。大馬鹿だ。
「…鍵やったら帰るんだな?」
「まあ…今日のところはね。」
棚の中から、鍵。
溜息をつきながら投げる。
「…ありがとう、カイジさん」
………。
微笑んだ顔に脳の活動が停止する。
何故かは知らない。
「あー…なんだ、餅あるんだけど…食ってくか?」
「すぐ帰らなくてもいいの?」
「…うるせえ、気が変わったんだよ」
「そういうことなら…いただきます。」
台所へ行ったところで、背後から聞こえる笑い声。
「甘いな…」
「え、砂糖がいいのか?砂糖醤油?」
「いえ、餅の話じゃありませんよ…。」
じゃあ何の話だ、と呟きながらも餅を焼いていく。
「あけましておめでとう、カイジさん」
「おう、おめでとう…。
…あー、まぁ迷惑この上ないが、来たくなったら…来てもいい…かも。」
「…ありがとう」
鍵とこの台詞を返してほしいと切実に願うことになるのは近過ぎる未来。
「おう、おめでとう…。
…あー、まぁ迷惑この上ないが、来たくなったら…来てもいい…かも。」
「…ありがとう」
鍵とこの台詞を返してほしいと切実に願うことになるのは近過ぎる未来。
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